不倫小説「不倫の掟」を公開します。
amo独占オリジナル小説です。
主婦・真由子の心を埋めるのは不倫恋愛。
真由子のただひとつの生きがいは、愛する男・正木友哉と会うことだった。
ある日ふいに「距離を置こう」と言われた真由子は……。
苦しく辛い日々の中、真由子の選んだ不倫の結末は?
連載・不倫小説【不倫の掟】
vol.1 夏の夜
スマホをタップ。
耳にギュッと当てる。
コール、1、2、3……。
4回目のコールに入る瞬間に電話を切る。
それが私と友哉の不倫の掟。
しかも、時間帯まで決まっている。
話がしたいから、と電話をすぐに掛けられる恋人とは違う。
不倫を快楽のように思うのは間違い。
不倫で快楽を得るのはほんの一瞬。
あとは、苦しく切なく辛いだけ。
なのにそこから逃れられない、逃れたくはない。
快楽だけの不倫者もいるかもいれない。けれど、少なくとも私にとっては、快楽は友哉に触れているその時だけ。
こんなにも好きなのに……。
その瞬間は、ほんのわずか。
こんなにも会いたいのに……。
1時間が経過する。
友哉から電話がくるかと待っていたけれど、諦める。
「1時間以内に電話がなければ、その日は会えない」
それも私と友哉の不倫の掟だった。
**
それでも、友哉からの連絡をどこかで待っている。
テレビを見ながらウトウト。
目が覚めると、すぐにスマホを見つめる。
友哉からも、そして、夫からも何の連絡もなく、四角の枠の中、キスマイの北山君が笑ってる。
少しだけへこんだ気持ちが癒される。
蒸し暑い夏の夜。
冷たい麦茶を飲む。
喉をならし、濡れた唇を手の甲で拭う。
紫外線でかゆみを伴う腕を、思い切りかきむしる。
血が出るまで、止められない。
私はどうかしているかもしれない。
そんな風に思う。
子供たちのことが気になり、玄関まで行く。
結花(ゆいか)も海(うみ)もまだ帰っていない。
4LDKの家には、わたしひとり。
キッチンテーブルの上にあるチキンカツを冷凍しようと思ったが、冷凍庫の中はギュウギュウだ。
夕飯のために作った唐揚げやスープ、さらにはゆでたパスタ、安売りしてたしめじetc。
チキンカツを冷蔵庫にしまいながら、しばらくは夕飯を作るのはやめようと思う。
誰のために生きているんだろう。
……誰も、私を必要としていない。
そんな風に思いながら、結花と海にラインをする。
「チキンカツあるよ」
<続く>
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不倫小説【不倫の掟】は連載小説です。
日々、更新をしてまいります。
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